英語でも日本語でも、言語は話すより読み書きの方が難しい。

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英語をぺらぺら話すことができる人を見かけると、すごいな、格好いいなと感じる人は多いでしょう。それは、「英語を話すことは難しい」と思っている日本人が多いからでもあります。しかし、実は英語を話すことよりも、英語で読み書きすることの方がはるかに難しいのです。

日本人が勘違いしていることが多いことの中から、今回は「言語は話すよりも、読み書きの方が難しい」というトピックを取り上げます。

●英語は話すよりも、読み書きの方が難しい。特に書くことが一番難しい。

日本人の英語力を測るテストとしては、TOEICが知られていますが、主に受験されているTOEICは「Listening & Reading Test」という聞く・読む能力を測るタイプのものです。社会人でTOEICを受験したことがある人は、大部分がこの「Listening & Reading Test」版でしょう。その一方で、IELTSやTOEFLを受けたことがある人は既に気づいているのではないでしょうか、英語のライティングの難しさに。そう、英語の4技能のうち、最も難しいのはライティング、書く能力なのです。

英語でメールを書くくらいなら問題ないよ、という人もいるでしょう。しかし、ビジネスでより重要なのは、メールでのやりとりよりも、仕事で必要な資料やマニュアル、契約書といった文書の作成や確認であり、それら文書を読んだ上で実際の業務を行うことです。例えば、A4で100ページ以上ある全文英語のマニュアルを読んで、その通りに作業しろと言われて、どれだけの日本人ができるでしょうか。5日間あればできるかもしれません。でも、1日や2日でやれと言われたらどうでしょう。

極端な話、単語のつづりがわからなくても、文法が多少間違っていても、英語での会話はできるのです。その反面、ビジネスの場面では、単語の間違いはまだしも、文法が間違っている文書などトラブルの元でしかありません。一般的に日本人が想像する以上に、英語は話すことよりも読み書きする方が難易度が高いのです。

●日本語も、話すより読み書きの方が難しい。

日本語を学んでいる外国人にとっても同様です。日本語も、話す方が簡単で、読み書きの方が難しいのです。アメリカ人でも、スウェーデン人でも、日本語はペラペラなのに、読み書きは主にひらがなとカタカナという人がほとんどです。つまり、漢字が読めないし書けないのです。

例えば、日本で小学校、中学校時代を過ごしたスウェーデン人は、日本語を話す点においては、生粋の日本人と変わらないレベルですが、書くのはひらがなメイン。仕事では読み書きに英語を使っていました。英語の契約書の作成や確認はできるのですが、日本語での契約書の作成・確認はできないからです。

20歳を過ぎてから日本にやってきたスウェーデン人の場合も、似たような状況です。若干ゆっくりですが、日本語を話すことは問題ありません。しかしメールはひらがなが多く、仕事での文書のやりとりはスウェーデン語か英語です。来日してから20年以上経つ、日本語ぺらぺらなアメリカ人でも、駅の券売機で電車の切符一枚、日本語で買うことすらできないのが現状です。

パソコンやスマホが普及している現在では、外国人でも予測変換を利用して日本語でメールを書くことは可能です。しかし、ビジネスに必要な資料や契約書の作成・確認となると、話は変わってきます。

例外は、台湾人や中国人といった中華圏の人たちです。中華圏の人は元々漢字を使っていますから、日本語の読み書きでも漢字部分はそれ程問題にはなりません。ただし、漢字以外の部分で問題があります。

●中国語も、話すより読み書きの方が難しい。

話すより読み書きの方が難しいのは、中国語も同じです。日本人は、漢字の部分でアドバンテージがありますが、他国の人はそうではありません。実際に、中国語を流暢に話すアメリカ人やオーストラリア人に会ったことがありますが、漢字の読み書きはあまりできず、仕事での書類の扱いは英語とのことでした。

また近年、台湾で出稼ぎ労働者として働く東南アジア人が増えています。しかし、彼らの大部分は台湾の漢字を読めないし書けません。現地の言葉で会話はできても、読み書きができないのです。そして、台湾人はそういった東南アジアの人たちを見下しています。これが現実です。昔から、台湾人は白人と日本人は別枠で扱い、それ以外のアジア人を下に見ているので、平常運転といえばそうですが。

●ビジネスや日常生活において、最も重要なのは言語の読み書き能力

ここまで英語、日本語、中国語の例を挙げてきましたが、何語であろうと、現実的には、話すことよりも読み書きすることの方が難しいのです。何より、仕事や日々の生活においては、最終的に話すことよりも読み書きの方が重要になってきます。職場でも家庭でも、役所の書類を確認し記入する必要が生じることがありますし、商品やサービスの購入によって領収書や保証書、マニュアルなど何かしら資料や書類が手元に届きます。日本では、こういった書類は日本語で書かれている訳ですから。

ちなみ我々プロジェクトメンバーは、イギリスやアメリカに長期滞在した時は、全て英語の書類に対応してきました。台湾に長期間住んでいる時は、中国語の書類の読み書きをこなしていました。英語でも中国語でも、しっかり自分でも勉強した上で、です。

日本に来ている外国人が、日本に長期間滞在するのであれば、日本語の読み書きができるようになるのが筋です。長期間滞在するのに、現地の言葉を身に着けようとしないのは、その国の文化や現地の人に敬意を持っていないことの現れです。

どの言語でも、話すことより読み書きの方が難しいことは事前にわかっているのに、何年たっても現地の言語で読み書きできない、する気もない外国人を大量に受け入れることは、良い結果を生みません。それは今のヨーロッパを見れば一目瞭然です。日本語の読み書きが問題なくできる日本人を無理なく活用する体制や、ロボットや自動化など日本のモノづくりの技術を生かすシステムをまず考えて、実践することをおすすめします。

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