全ての日本人が英語を話せなくていい3つの理由

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筆者は三か国語を話し、仕事上、英語を学ぶ日本人に様々なアドバイスを送っていますが、その一方で、全ての日本人が英語を話せる必要があるとは考えていません。この点を勘違いしている人が多いのですが、翻訳・通訳用の様々なサービスやアプリで対応可能であれば、それで十分です。取引先が外国であったり、ホテル等の観光業界で働いていたりと、仕事で英語が必要な人と個人的に英語を学んでいる人を除けば、そもそも日本人が全員英語を話せるようになる必要はないのです。

今回はその主な理由を3つ、以下に紹介します。

1. 日本はイギリスの植民地になったことがない

英語とは「英国の言語」、つまりイギリス発祥の言語です。アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった国は、かつてイギリスの植民地でした。だから、これらの国では英語が公用語ですし、国民が英語を話せる訳です。

一方の日本は、イギリスの植民地になったことがありません。もしアメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの人が、なぜ日本人は英語が話せないのだと言ってきたら、「日本はイギリスの植民地になったことがないから」と答えれば良いだけです。

自分自身が日本にいるならば、日本語で答えれば十分です。もちろん、英語や他の言語ができる人は、それらの言葉で答えても良いですが。

2. 日本語と英語には共通点がほとんどない

英語と多言語の、文法と発音の違い

この画像は以前人から送って頂いたものですが、非常にわかりやすいので紹介します。英語を基準に他言語の発音と文法の違いを図にしたもので、発音でも文法でも、英語と日本語の距離が一番離れていることが見て取れます。それはつまり、日本人にとって、英語が最も習得するのに時間を必要とする言語ということです。

そもそもの話、英語でも他の外国語でも、母語である言語と共通点がある程、理解しやすいものです。例えば、日本語と中国語では漢字という共通点がありますから、日本人が中国語を学ぶ場合は読み書きの点でアドバンテージがあります。漢字を見れば、大体の意味が想像できるからです。

さらにスペイン語を母語とする海外の友人たちの話を聞くと、きちんと学んだことがないのに、フランス語やイタリア語の会話が何となくわかるというのです。スペイン語、フランス語、イタリア語は、ラテン語をベースに持つ言語で共通点が多いことによるものですが、このように言語間の類似性は理解に有利です。

英語を母語としていない外国人に、なぜ日本人は英語が話せないのだと質問されたら、「日本語と英語には、発音でも文法でも共通点がないので、ほとんど全てのことを一つずつ覚えるしかないから」と答えましょう。

3. 日本国内にそこそこ仕事がある~失業率、若年失業率がそこまで低くない。

以前、数か国語を操るスウェーデン人に、なぜスウェーデン人には英語が上手い人が多いのか質問したことがあります。すると、「スウェーデン語は英語と似ている言語なので習得しやすい」、「スウェーデン国内の市場が小さく、他の国にも仕事を求める必要がある」という、2つの答えが返ってきました。

詳しく聞くと、理工系はまだよいのですが、人文系の大学・大学院を選んだ場合、あまり仕事がないとのこと。実際にその後、仕事が見つからず何年も大学や大学院に通っている人文系のスウェーデン人学生に何人も出会いましたし、イギリスやドイツで仕事をしているスウェーデン人にも出会いました。

スペイン人の友人も、スペイン国内に仕事がないので、英語を学んで一時期イギリスで働いていました。またお世話になったクロアチア人は、ネイティブかと間違えるくらい英語ペラペラだったのですが、自国内にあまり良い仕事がないため、英語を身に着けたとのこと。アジアでは、英語達者なフィリピン人がアメリカや中東に働きに行くケースが想像しやすいでしょうか。

つまり、自国内に仕事がない、もしくは良い仕事がないために、より良い仕事を求めて英語を活用しているのです。

新型コロナが流行する前の各国の失業率、特に若年失業率を調べてみるとわかることがあります。失業率の定義は国によって異なることもあり、数値を単純比較することは難しいですが、「スペイン 若年失業率」や「イタリア 若年失業率」など、調べたい国名を入れて日本と比較してみてください。

日本国内にも色々と問題はありますが、失業率、中でも若年失業率という観点から見ると、まあまあ悪くはないと言える状態です。何より、生まれ育った国で母国語だけで仕事をして生きていけるというのは、決して悪いことではありません。

仕事で英語が必要な人や、英語に興味があって身に着けたい人は、積極的に英語学習に取り組みましょう。逆に英語を使う仕事をしておらず、英語に興味もないという日本人は、英語を話せなくてもいいのです。上記のように、本来全ての日本人が英語を話せるようになる必要はないのですから。

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