日本のマスメディアは多文化共生の良い面ばかりに焦点を当て、日本も多文化共生を進めるべきだというスタンスで報道をしていますが、多文化共生を議論する際には、まずそれぞれの国が歩んできた歴史的背景の違いを理解することが不可欠です。
とりわけ、「移民国家」とされる国々と日本では、国家形成の過程が大きく異なっており、同じ枠組みで議論を進めることには限界があります。ここでは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを例に、大前提として頭に入れておきたい「事実」を改めて説明します。
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは国の成り立ちが日本と大きく異なる
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった国々は、ヨーロッパからの移民が現地の先住民を排除・支配する形で成立した歴史を持ちます。端的に言えば、移民が現地の先住民を大量に虐殺して乗っ取った訳です。特にニュージーランドを除く3か国では、現在でも先住民の人口は全体の数%程度にとどまり、移民とその子孫が事実上の多数派を占めています。そのため、これらの国々が「移民国家」として移民を歓迎する姿勢をとっているのは、過去に移民が支配的立場を築いた結果とも言えます。
さらに、これらの国々が独立国家として歩み始めたのは19〜20世紀以降であり、国家としての歴史はわずか100〜200年程度に過ぎません。その分、制度や価値観は近代的ではあるものの、文化的・歴史的な基盤は浅いものになります。
一方、日本は千年以上にわたる長い歴史と独自の文化を持ち、外的支配をほとんど受けることなく発展してきた国です。このような歴史的背景の違いから、アメリカなどの移民国家の制度や価値観を日本にそのまま当てはめて議論するのは現実的ではありません。
日本のマスメディアにも、それぞれの国が辿ってきた歴史的経緯を踏まえた上で、日本は今後どうしていくのが良いのかを伝えて欲しいものですが…。まずは日本人一人一人が、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの「移民国家」と日本では国の成り立ちが大きく異なることを念頭に置いておきましょう。その上で、より良い日本社会のためにより良い方法を考えて実行していきましょう。単純にアメリカなど他国の真似をする必要はありません。